経常収支を見ると日本経済の未来がわかる(気がする)話

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お金より大切なお金の話

コロナ下で露わになった日本経済の衰退。いきなり仕事が無くなり困窮する人が続出。最近も「日本の平均所得が韓国に抜かれた」と一部で話題になっていた。

一方で、株価は(最近乱高下気味ですが)30年ぶりに日経平均が3万円台を回復するなど強気相場が続いている。また首都圏を中心に億ション並みのタワマンが「軒並み完売」するなど、相変わらず富裕層や高所得層の消費は活発と二極化が甚だしい。

一時は世界第二位の経済大国でブイブイ言わせていたわが日本。国民の8割が自分が中流と考えていた平等は日本が、どうしてこうなってしまったのか疑問に思っている人も多いだろう。

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経常収支とは

個人的には、日本経済の変質を最もよく表していいると思われるのが「経常収支」の変質。経常収支とは、国内と海外の「資金のやり取り」を表したもの。中身としては、物の輸出入の出入りの差額である「貿易収支」が代表格。それ以外には、お金の流れを表した「所得収支」や、特許やプログラムの使用料、音楽や映画の著作権料に観光客の落とすお金を加えた「サービス収支」などで構成されている。

要は、日本経済が海外との間で「どれだけ稼いだか」または「支払ったか」を集計したもの。

日本の経常収支の過去の推移を見ると、東日本大震災の一時期を除いて、ほぼ大体「年間20兆円前後」の黒字を叩き出し続けている。

経常収支の中身が、この10年で激変

あまり知られていないが、この「経常収支」の中身が、この10年ほどで激変している。以前は、自動車やコンピューターなどの「物」の輸出で稼ぐ「貿易収支」の黒字が大半だった。ところがこの10年ほどで、この貿易収支は激減。代わりの黒字の主役を占めるようになったのが、海外子会社などからの利益送金が主体の「一次所得収支」と呼ばれるもの。以前は日本の工場で製品を作って海外に輸出して稼いでいたものが、海外に工場をつくって現地で売る形にシフトするのが、日本企業の活動の主役になってきている。一見すると黒字が続いているから良いように思えるかもしれないが、実はこの経常黒字の内容の変化が、過去20年ほどの日本経済の推移を如実に表している。

経常収支の推移(通商白書2020:経済産業省)

国内のお金の流れが激変

上のグラフを見るを一目瞭然だが、2008年のリーマンショックあたりから、「貿易収支の黒字」が徐々に減少。2011年の東日本大震災で原発停止に伴い、発電用の天然ガスの輸入が急増したことから、なんと日本の貿易収支は、一時「赤字に転落」していたのがわかる。

その一方、所得収支が、年々拡大しているのが見て取れる。直近では、経常収支の黒字の大半が「一次所得収支」で占められるまでに。未だに日本は「貿易立国」だと思っている人が居るが、実際には「投資立国」になっている。ここ数年は、貿易収支は「赤字ギリギリ」という状態。

貿易黒字では労働者にお金が流れる

同じように海外から稼いでいるのだから「無問題」と思う人も居るかもしれないが、貿易収支の黒字と所得収支の黒字では、同じ黒字でもお金の流れが激変してしまう。

上の図は、物の輸出である「貿易黒字」で稼いでいる場合のお金の流れを図示したもの。国内の工場で生産した製品を輸出するため、稼いだ「黒字」は、輸出企業(例えばトヨタ)を通じて、工場で働く労働者や下請けの中小企業に遍く「分配される」形になる。この「分配されたお金」は、労働者の家計から、外食や住宅の購入、果ては「パチンコ」「スナック」「風俗」まで、国内経済の隅々に流れている。まるで毛細血管の血液のように地域の経済、ひいては日本経済全体に流れる。

所得収支だとお金が偏ってしまう。

ところが、海外生産を中心に稼ぐ「所得収支」の黒字の場合には、同じように海外からお金は国内に流れるものの、その先の流れが偏ってしまう。下の図はそれを図示したもの。

この場合、海外から稼いだお金は、海外子会社からの「配当」や利子の支払い、特許料などの形で国内にある本社に流入する。問題はその先。貿易黒字では、国内工場で働く「何万人どころか何十万人」の労働者にお金が流れるが、配当などの投資収益では、この流れが止まってしまう。

お金を受取れるのは、株を保有している「投資家」のみで、それ以外の余剰は、国内の本社に「内部留保」という形で「貯めこまれる」ことになる。これは、一時話題になった「企業の巨額の内部留保」の正体。

株式投資をしていないとお金が流れてこない。

上の図を見れば一目瞭然だが、「普通に」働いていては、「お金は流れてこない!」。むかし、有名投資家の邱永漢先生が、お金持ちになる秘訣を聞かれて、「お金が流れている所に手を差し伸べればいいんですよ!」と言ったのは、有名な話。昔なら企業で労働者として働くのが一番簡単な方法だった。ところが、上の図を見てわかると思うが、この方法は、もう使えない。トヨタなどの超一流企業で、エリートのホワイトカラーとして働けるならいざ知らず、殆どの「普通の人」にとっては、この方法は無理。そうなると普通の人が取れる一番簡単な方法は、「株を買う」ことに尽きる。

格差の拡大や地方の衰退も経常収支で説明可能

21世紀に入ってから日本でも「格差の拡大」が話題になるようになってきた。また地方の衰退も著しい。なぜ、こうなってしまったのか途方に暮れている人も多いかも知れないが、上の図を見れば一目瞭然。以前は、国内工場で製品を製造していたので、労働者や下請け中小企業経由で地方にも流れていたお金が、東京や名古屋など、大企業の本社のある都市部に「一極集中」するようになったため。

また超高齢化社会が到来したため、以前なら「公共工事」という形で地方に分配されていた「お金の流れ」が止められたのも地方にとっては「致命傷」。

法人税を引き上げても無意味

最近は、それなら企業への法人税を上げればいいじゃないか、という意見も目立つ。ただし、グローバル企業や、株の大半を持っている「富裕層」は、簡単に国境をまたぐことが出来る。もし日本国内の法人税などの税負担が、外国と比べて高い、となった場合には、簡単に利益の付け替えが出来る。実際にAmazonやApple、スターバックスなどのグローバル企業は、日本どころかアメリカでも法人税を殆ど納付していない実態が以前暴露されて騒動になった。多くの欧米系のグローバル企業は、アイルランドなどの「タックスヘブン」に関係会社を設立、ブランド使用料や特許料という形で出た利益の大半をタックスヘブンに集中させて「課税を免れている」。もし日本政府が外国と比べて過大な税負担をグローバル企業に求めれば、起業は簡単に利益を「タックスヘブン」に移し替えてしまうだろう。

格差は拡大し続ける

経常収支の話は、いい話と残念な話と両方を含んでいる。いい点としては、「日本の経常収支の黒字は今後数十年は増え続ける可能性が高い」ということ。経常収支の黒字が続いている限り、極端な円安やハイパーインフレ、ましては財政破綻なども想定しずらい。

一方で「残念な話」としては、「国内の格差は拡大し続ける」ことが予想される。仮に少し円安になったところで、トヨタを筆頭に多くのグローバル企業は、「現地生産現地販売」が当たり前となっており、今更、人件費の依然として高い日本に生産拠点を大々的に戻すとは思えない。また労働人口が国内では減少していることから、グローバル企業が求める「質の高い人材」を国内で得にくくなっており、無理をして生産拠点を国内に戻すメリットが、将来も見出せない可能性が高い。

結論としては、今後数十年に渡って、日本国内では「株を持っている者」と「株を持たざる者」の格差が拡大し続けることになる。

コメント

  1. […] […]

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